シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

2019-01-01から1年間の記事一覧

「みなと計画」始動

NPO法人「みなと計画」が設立登記されました。2018年3月13日のことです。いよいよ橋本さんが長い間あたためてきた江別発若者支援の拠点づくりが始動することになったのです。 では「みなと計画」とはどのようなものなのでしょうか。NPO法人「みなと計画」設…

I Have a Dream

‘I Have a Dream.’。それが、江別港の代表・麺こいやの店主橋本さんの自己紹介のときの決まり文句です。橋本さんの夢は、お金がないために自分の人生選択の幅が狭くならざるをえない、または自ら狭めている若者を支援することです。はじめて出会ったころ橋本…

人と人との出会いを演出し、支え合いと若者の挑戦を応援する

直接顔を合わせる訳ではありませんが、麺こいやにいると見知らぬ人や世界に触れることができます。それは、麺こいやが人と人とをつなぎ、さまざまな人やグループ・機関の挑戦や活動を応援し、紹介しようとしているからです。例えば自分の善意を託しておく仕…

家族の協力と協働が支える江別港・麺こいや

現代の家族関係を社会学的に考えるキーワードは夫と妻との関係における「相互的内助の功」ではないかと、私は考えてきました。そして麺こいやを訪問する中で感じてきたことは、麺こいやの橋本さん夫妻はそうした関係性を実現されつつあるのではないかという…

現代社会の家族と夫婦関係を考える

社会学者にとって、現在、心が痛むことは、いたましい家族問題が多数噴出していることです。現在の市場経済社会の理不尽さが、なによりも私たちの社会の基礎単位社会である家族に、大きな否定的影響を及ぼしているのです。 家族は、本来、親密な思いやりの心…

カフェ・食堂としての江別港

江別港はカフェ・食堂としての顔ももっています。この面でのお店の名称は「麺こいや」と言います。麺こいやはカフェ・食堂としてだけ見ても独自の輝きと存在感をもっているのです。それは、単なるCommunity Hub+αの存在ではないのです。 私は授業活動とは別…

Community Hubとしての江別港

大麻銀座商店街に住み暮らしている生活者の目から見ると、私たちの授業活動は、一時的で、思いつきのようなものと映ったかもしれません。しかし、そうした活動であっても受け止め、後押ししていただいたことに心から感謝しています。とくに、私たちが希望し…

大麻銀座商店街でのフィールドワーク実践の試み

従来の社会学における地域社会を舞台とするフィールドワークは社会学研究法の一環として社会調査を実施するものでした。そのための準備作業として、大学の教室で、まず、社会調査とは何か、社会調査の歴史や技法などについて学びます。そして、社会調査の実…

商店街が学生活動を支援し学生を育てる

大麻銀座商店街と出会い、商店街を舞台として大学の授業をしてみようという私の試みは、決して目新しく、先駆け的な試みではありません。全国的にはかなり前から試みられてきていたものです。 大麻銀座商店街で授業を行うようになってから手にした本の中に、…

大麻地区商店街の歴史

大麻銀座商店街は北海道江別市の大麻地区にある6つの商店街の一つです。江別市の大麻地区は、東京オリンピックが開催された1964年から、札幌の近郊ベットタウンとして開発され、その後急速に発展を遂げていった地区です。江別市では初期の団地開発地域であ…

学生たちの学びの場を求めて

卒業生のサラリーマン生活をとりまく環境の悪化と理不尽さの増大という状況を受けて、在学時代に学生たちに何を学んでもらったらよいだろうかについて考えるようになっていきました。時代的風潮としてはより一層「いい大学を出ていい会社に入る」という考え…

大学教員の教育役割とは

商店街は、人を一人前にすることのできる社会的力をもった社会となる可能性を秘めているのではないかと考えるようになったのは、北海道江別市にある大麻銀座商店街との出会いでした。この出会いがあったことで、学生をどのように育てたらよいかということに…

人を一人前に育む社会の力

ニート、フリーター、そして社会的ひきこもり問題や児童虐待、ドメスッテクバイオレンスなどの身近な人の間での暴力的関係性は現代社会における大きな社会問題です。また、「誰でもよかった」という動機なき殺人事件や無差別かつ大量の日常生活に潜むテロ的…

コミュニティビジネスへの挑戦

インタビュー時、小村さんは地域農業の「担い手育成」を目指すコミュニティビジネスにも挑戦しようとしていました。小村さんは、地域の現状として、乱開発が進んでいること(小村さんが暮らしている野底は、伊原間から川平までの風光明媚な路線に位置してい…

防災力のあるコミュニティづくりへの挑戦

幾多の困難と試練を乗り越えてマンゴー農園を設立し、経営を軌道に乗せることができるようになったことを、小村さんは次のように振り返っていました。 「自分たちは特別なことは何もしていないんです。ただ、いろんな人たちに助けられながら、自分たちのでき…

マンゴー農園設立物語(2)

小村さんはマンゴー農園の購入資金問題の壁をどのように乗り越えていったのでしょうか。それはマンゴー栽培の実績をつくるために借地し、小作をするという道でした。幸いなことに所有者の方にそのことを理解してもらい、マンゴー農園を借りることができたの…

マンゴー農園設立物語(1)

新たな人生へ向けて再出発しようという前向きな気持ちになれたのは、竹富島で生活する中で、現在の奥さんに出会ったことだと小村さんは話してくれました。そのことは、「石垣島人情物語」には次のように紹介されています。 「故郷を離れ、竹富島の民宿で働い…

人生探しへの旅立ちと八重山地方との出会い

小村さんと八重山地方との出会いの端緒となったのは取引先からの仕事の依頼であったそうです。その仕事とはリゾート開発にかかわるものでした。場所は沖縄本島でした。小村さんが、石垣島でマンゴー農園を経営するようになるまでの歴史に関しては、2009年7…

絶望を抱えて

小村義信さんの人生の歩みは、はじめ順調そのものだったのではないかと思います。小村さんは、1961年生まれ、兵庫県神戸市の出身です。大学は近畿大学工学部。建築学科で設計を学び、1984年に卒業しています。卒業と同時に、南カリフォルニア大学に留学し、…

人の願いや思いが社会をつくる

今回から小村義信さんを紹介していきたいと思います。小村さんは、石垣市野底の栄集落でマンゴー農園を経営している方です。そして、小村さんの栄集落との関りを見ていくと、社会はやはり人の願いや思いによって形創られていくものなのだなということを実感…

人生リセットの地

前回の記事で参照した下川さんは、人生の旅の一環として、八重山地方を含む沖縄に押し寄せていた人たちについても取材していました。そしてその取材を通して、「彼らが沖縄に求めたもの。それはかなりの部分で、バンコクでの外こもり組とダブってくる気がす…

自分の生きる居場所を見つける旅の旅人たち(2)

2007・8年当時、私が宿泊していた竹富島にも、自分の生きる居場所を求めて旅をしていると思われる多くの若者を見かけたものでした。彼ら、彼女らは、竹富島で、民宿のヘルパーや、飲食店やお土産屋さんでのアルバイトなどをしていました。星砂のある浜として…

自分の生きる居場所を見つける旅の旅人たち(1)

私がフィールドワークで訪れるようになったとき、観光客、移住者、そして自分の人生を探す旅人が押し寄せてくるようになったことに関する議論が沸騰していました。多くはよそ者が押し寄せてくることで八重山地方の自然、生活、文化が破壊され、大きく変わっ…

人生の旅人たちの出会いと交流の地(2)

竹富島で出会った方々は、それまで私が観光客ということで思い浮かべていた人とは全く違っていました。前回紹介した高橋さんがそうでした。その中に、黒島の牛祭りのときに決まって出会う人もいました。八重山地方の黒島は石垣牛の産地です。黒島では、2月…

人生の旅人たちの出会いと交流の地(1)

1年の中で2~3月というごく限られた期間ではあるのですが、毎年竹富島を訪れ、フィールドワークを続けていくことで、私がそれまで経験してきた観光とは違った旅人たちに出会うことができたのです。その方々は「人生の旅人」だという思いが、私の頭の中に…

観光地化に成功した竹富島

地理的移動の旅と重ね合わせて自分の人生の旅を歩む人も少なくないのではないでしょうか。その地理的移動の旅は、観光やビジネスではなく、本人が意識しているかどうかは別として、自分の人生探しの旅という意味です。現代社会は、多くの人たちが自分の人生…

人はみな人生の旅人

これまでは福島県昭和村の生活文化について綴ってきました。その文化は、個人化的生活様式が行き渡ってしまった日本社会の中では貴重かつ奇跡的なものでした。親密性と開放性を同時に兼ね備えた人の関係性が見られました。それは長い歴史を重ねて地域の方々…

究極のおもてなし

昭和村には日常的に人を招いてお茶を飲みながら楽しいひとときをともにするというおもてなしの生活文化が根づいています。その文化のおかげもあって今でも(社会学者の中には、現代社会を生きるということは、「地域の共同性空洞化社会」、すなわちちょっと…

地域で共に生きるという福祉

家族の発展サイクルの中で子どもの世代がすべて地域の外に出てしまい親世代だけが地域に残って暮らしているということはよくあることです。そのことを自治体関係者の方々はどのように見ているのでしょうか。地域づくりでは全国的にも有名なある自治体の方は…

地域とつながり活躍する高齢の男たち

日本の自殺問題のひとつの特徴は、高齢者の自殺率が高いということです。ではその背後には何があるのでしょうか。高齢者の「孤独」問題と言われてきました。それはとくに高齢男性で顕著なのです。『世界一孤独な日本のオジサン』の著者岡本純子さんによれば…