シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

2020-01-01から1年間の記事一覧

閉塞と生存競争・争いごと激化という時代状況

宮沢さんは、なぜ自分の一生を懸けようとするほど国柱会に夢中になったのでしょうか。それは、国柱会こそが当時の「乱れた」社会を変革し、宮沢さんの夢であった仏国土建設を実現してくれると期待したからではないでしょうか。しかもその実現の時は真近に迫…

仏国土建設の夢熱に浮かれて

宮沢さんは、なぜ、「世界全体の幸福」を探求するという自分の使命感や虫にさえ慈悲を感じる感性をもつような人だったにもかかわらず、戦前の侵略戦争を唱導し、躊躇なく悪人を殺せというような「無慈悲・酷薄」な主張をしていた田中さんの率いる国柱会に夢…

国柱会に入会す

宮沢さんは1920年の10月に宗教団体国柱会に入会します。そして、その12月に手紙で農林高等学校の友人であった保阪嘉内さんに「今度私は国柱会信行部に入会致しました」と報告するのでした。 『塔建つるもの―宮沢賢治の信仰』の著者である理崎さんによれば、…

社会学的人間観

これからいよいよ法華経の布教・伝道者および仏国土の建設者としての宮沢さんの人生の歩みをたどってみようと思います。その手始めとして、ここでは、社会学的人間観について触れておきたいと思います。宮沢さんの人生の歩みを理解するためです。 社会学は人…

信仰と世俗倫理・人情(3)

宮沢さんの人生の歩みを社会学の目で見ると、信仰と家族との関係も重要なテーマとなるように思います。宮沢さんの人生の歩みを少しでも理解するために仏教関係の本を読みながらそのテーマの重要性に気づくことになったからです。 個人的な理解になりますが、…

信仰と世俗倫理・人情(3)

宮沢さんの人生の歩みを社会学の目で見ると、信仰と家族との関係も重要なテーマとなるように思います。宮沢さんの人生の歩みを少しでも理解するために仏教関係の本を読みながらそのテーマの重要性に気づくことになったからです。 個人的な理解になりますが、…

信仰と世俗倫理・人情(2)

宮沢さんが仏教的世界観(宮沢さんは法華経の行者をめざして生きていくことを決意していくのですが、世界観という点から見ると、より幅広い信仰をたえずアップデートしつつ自己のものとして形成していったのではないかと思います。ここではそのうち、その中…

信仰と世俗倫理・人情(1)

法華経の布教・伝道師および仏国土の建設者として歩むことを決心した宮沢さんが、その第一歩として行ったことは、童話をつくり「家族の前で読んで聞かせる」(吉田さんの年表)ことでした。それは、「蜘蛛となめくぢと狸」と「双子の星」という二つの童話で…

法華経が示す人を救う道とは(2)

永遠の命をもっている仏さんが住んでいるところは、「三千大千世界」の中の「霊鷲山(りようじゆせん)」というところだそうです。ここを本拠地にして、仏さんは「三千大千世界」すべての世界を「仏国土」とすべく自己の教えを説いているといいます。 法華経…

法華経が示す人を救う道とは(1)

「あの世」における極楽浄土という死後の世界での救済を説く浄土教の示す人を救う道は、私たちが生きている「この世」での人を救う道を求めている宮沢さんが選ぶ道ではなかったと言えます。では、法華経はどのような人を救う道を示してくれるのでしょうか。 …

人を救う道を求める

宮沢さんが法華経に出会い身震いするほどの感動をおぼえたさらなる理由は、法華経が苦しむ「一切の衆生」を救う道を宮沢さんに示してくれたからではないでしょうか。宮沢さんの生き方を理解するために付け焼刃で読んだ仏教関係の本の受け売りになりますが、…

人間皆これ仏?

苦しむ「一切の衆生」を救うという阿弥陀仏と同じ本願をもった宮沢さんが感動した法華経の人間観とはどのようなものなのでしょうか。すべての人間には「仏性」、すなわち仏になることのできる可能性があるというものではないかと思います。『法華経を読む』…

人間皆これ極悪人?

宮沢さんがもう「ボロボロ」になるくらい精神的に追い詰められたとき、それを救ったのは法華経でした。「私は殆ど狂人にもなりそうなこの発作を機械的にその本当の名称で呼び出し手を合わせます。人間の世界の修羅の成仏。そして悦びにみちて頁を繰ります。…

若き宮沢賢治さんの悩み

阿弥陀仏とともに歩み苦しむ「一切の衆生」を救うという願いはどうしたら実現することができるのだろうか。そうした課題を解決する糸口を、宮沢さんは法華経との出会いの中で見出していきます。宮沢さんの法華経との最初の出会いは、やはり中学時代でした。1…

阿弥陀仏になろうとした宮沢賢治さん

私たちは日々の生活の中で、それを意識することがないにしても、人それぞれの世界観に従って生きています。世界観とは、私たちの内面的な態度、または心的態度のことです。それは、自分が生きている環境世界をどのように認識し、どのように関わっていくのか…

宮沢賢治さん実業家をめざす?

宮沢賢治さんの人と作品を紹介する著作物は膨大な数に上りますが、その中の本の少しのものを読んだだけでも、宮沢さんが実業家になる夢をもっていたのではないかということに興味が惹かれます。そしてその夢が実現していたら宮沢さんはどのような人生を歩ん…

宮沢賢治さんがなりたかったものとは(3)

中学校卒業後自分の納得のいく進路を歩むことができず、悶々とした生活をおくっていた宮沢さんに、幸運が舞い込みます。それまで家業を継ぐことを迫っていた父が、盛岡高等農林学校への進学を許してくれたのです。「優しい母は賢治に味方を」してくれていた…

宮沢賢治さんがなりたかったものとは(2)

中学卒業後の挫折生活の中、宮沢さんはどのような生活をしていたのでしょうか。『宮沢賢治 人と作品』の著者、岡田さんによれば、「古着屋の店番やら、宮沢家でしていた養蚕の桑の葉をつんだり、何やら物思いに沈んだ様子で近在の田園を歩きまわる」というも…

宮沢賢治さんがなりたかったものとは(1)

どんな職業に就き、仕事の中で何を成し遂げたいのかということを、社会学では職業アイデンティティと言います。この職業アイデンティティに関して言うと、宮沢さんのアイデンティティとはどのようなものであったのかということについては、実現化したものと…

宮沢賢治さんという人について

吉田さんの宮沢賢治さんの人物論に関してもかなり手厳しいものがあります。吉田さんは論じています。 「賢治は花巻という町、村の中でどのような〈異物〉であったか?それはこれからるる物語るが、彼もまた三つのキーワードを持っている。 (A)質屋または地…

意味ある人生をおくる道を探す旅

現在世界中が新型コロナ禍にあり、生き生きと生きている方々に出会う旅をすることが非常に難しい状況にあります。無理をすればできないことはないのかもしれませんが、できれば出会う人と気持ちよく出会い、話を聞きたいなと思うのです。少し実際の旅は自重…

スコッチウイスキーと共に生きる島―アイラ島(2)

アイラ島はスコッチウイスキーの島です。私たちが訪問したときには8つの蒸留所がありました。アイラ島のすぐ隣には、やはりスコッチウイスキーの産地として有名なジュラ島があります。アイラ島は本物のスコッチウイスキーの島なのです。 アイラ島に渡るため…

スコッチウイスキーと共に生きる島―アイラ島(1)

スコットランドの伝統食物・料理の研究家であるアネット・ホープさんは、地域固有の食・料理と地域づくりとの関係に注目しています。アネットさんによれば、スコットランドには、「自己の伝統的な食物や料理を再発見し、再評価する動きがある」といいます。…

スコットランドの精神風土象徴の地を訪ねて―アイオナ島(2)

アイオナ島の人々は、彼ら、彼女らのキリスト教の4つのルールに従って生きようとしています。アイオナ・コミュニティの生活を律している4つのルールとは、 毎日祈りをささげ聖書を読む お金と時間を含む生活の糧の使用を共有化し、責任を分担する コミュニ…

スコットランドの精神風土象徴の地を訪ねて―アイオナ島(1)

アイオナ島は、スコットランドのインナー・ヘブリディーズ諸島に属する、幅1.6㎞、長さ5.6㎞、人口175人[ウィキペディア(2014)]の小さな島です。アイオナ島へは、スコッチウイスキーで有名なオーバンという港町から、まずマル島にわたり、さらにフェリーで…

女性が活躍するハイランド地方の地域づくり

これまでエッグ島、アラプール、そしてケアンドゥの地域づくりを紹介してきましたが、いずれの地域づくりにおいても女性たちが活躍していることが印象深く記憶に残っています。フィールドノートにも、ハイランドの地域づくりでは女性たちが活躍しているのは…

社会的企業のある地域コミュニティ――ケアンドゥ(2)

ケアンドゥの地域づくりを担っているもうひとつの中核的組織はコミュニティ・センターです。その名前は、Here We Areといいます。文字通り私たちはここに存在しているということを宣言しているのです。どんな小さなコミュニティであってもそこには人が住み、…

社会的企業のある地域コミュニティ――ケアンドゥ(1)

スコットランドの近代産業発祥の都市であるグラスゴーから北西の方向に車で約1時間30分のところにあるのがケアンドゥです。その地域コミュニティは汽水湖であるファイン湖の先端部分に位置しています。現在の人口は約170名。ケアンドゥのかつての主要産業は…

芸術家のタマゴを育てる町―アラプール(2)

「ソレイス」は、またアラプールの町づくりにもかかわっていました。そのこともあって、アラプールでは、住民たちによる自主的な活動、とくに文化・芸術・教育に関する諸活動が大きく花開いています。例えば、1993年には小学校でゲール語教育が開始されてい…

芸術家のタマゴを育てる町―アラプール(1)

アラプールは、人口約1,300人の、外ヘブリディー諸島へ向かうフェリー基地にもなっている港町です。地理的には、HIEがあるハイランド地方の首都ともいうべきインバネスから西北へ車で2時間弱走ったところに位置しています。主要な産業は、港湾関係の諸事業…