シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

スコットランドへのフィールドワークの旅

 スコットランドも僻遠の地と言われるような地で人々が生き生きとした生活を築いている「国」の一つではないでしょうか。スコットランドは正式には一つの国ではなく、イギリスの一地方にすぎません。にもかかわらずスコットランドに住んでいる多くの人たちは、自分たちが暮らしているスコットランドは政治的に独立・自立した国であることを願って生活しているのです。

 生き生きと生きている人に出会う旅というフィールドワークにとってスコットランドという「国」はどのような意義をもっているのでしょうか。社会学の目で見て言えることは、自分が所属して生活している社会が自分たちの社会であると心から、そして誇りをもって感じながら生きることができていることが、人が生き生きと生きるための社会的基盤となっているのではないかということです。

 そしてさらに、自分自身が自分たちの社会を支えている、社会形成を担っていると実感できているならば、日々の生活を生きていて、自分は生き生きと生きていると感じられるのではないでしょうか。スコットランドという「国」はそうした社会と個人の関係性が見られる「国」であると考えられるのです。

 話が少しわき道にそれますが、スコットランドのフィールドワークの旅では、また別の楽しみがありました。それは自分一人だけでなくフィールドワークに同行する仲間がいたことです。専門分野も問題関心も違っているのですが、スコットランドというフィールドを共にする同じ大学の仲間たちがいたのです。その仲間たちとは、フィールドワークをするときだけでなく、日常的に交流もしていました。とくに1~2か月に1回のペースで開かれた「チャット」の会(おしゃべりの会)も楽しい思い出となっています。

 経済学を専攻し、スコットランドの社会形成史に関心をもっている方、アメリカ文学専攻でそのアメリカ社会形成の源流の地のうちの一つであるスコットランドの自然と文化に関心のある方、そして私と同じ社会学を専攻し、コミュニティ企業や自然エネルギーによる地域経済の活性化を探求していた方、それぞれの方々がスコットランドへの異なった関心と視点からフィールドワークの旅を共にしていたのです。おかげで自分一人だけの狭い関心と視点だけではなく、さまざまな関心と視点から見えてくるスコットランドについて学ぶことができました。フィールドワークの旅を共にしてくれた仲間たちに心から感謝しています。

 そして、さらにもう一人忘れられない仲間がいました。その方は英語学を専攻していましたが、また平和学を探究していました。平和学に関しては北海道のオピニオンリーダーとしての役割を果たしていました。スコットランドに関しても造詣が深く、私たちグループの指導的位置にありました。とくに経済のグローバル化が進む中でスコットランドがイギリスからの独立をめざす運動を展開していることに関心を寄せていました。ただ残念なことに退職後急逝されてしまったのです。長い間のご指導に感謝し、心からご冥福をお祈りしたいと思います。

 スコットランドはなぜイギリスから分離独立して自分たちの国づくりをしようとしているのか、イギリスから分離独立してどのような社会づくりを目指しているのか、そしてそれはスコットランドで生活している人々にとってどのような意味をもたらすのか、はたしてスコットランドに住んでいる人たちが生き生きと生きることを可能にしてくれるのか等々の問いに何とか答えを見つけ出したいという点に関して、私たちの仲間は、それぞれ専門分野は違っていましたが、共通して関心をもっていました。

 イギリスからの分離独立をめざすスコットランドの動きはローカルナショナリズムと呼べるものではないかと思います。すなわち、それは、一つのネイションとして独立しようとする志向性をもった地方主義なのです。またその運動は、スコットランド議会のイギリス議会からの分離独立的創設に結実していました。1997年、スコットランド議会創設の住民投票において、1,775,045票という投票総数の74.3%の賛成票を獲得したのです。スコットランドの人々の長年の願いだったスコットランド議会の再開が実現したのです。

 ローカルナショナリズムの「国」、スコットランドにおける地域社会づくりとそれを担っている人々に出会う旅に出てみたいと思います。

 

          竹富島・白くまシーサー・ジャンのいちファン