シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

2024-01-01から1ヶ月間の記事一覧

仏教と倫理に関するジレンマと宮沢賢治さん(3)

宮沢さんは、あまりにも高い大乗仏教の理想とそれを自分自身で実践する道を進むためにその理想を実現するにふさわしい人間にならなければならないとの思い込みから、その理想的自我と、煩悩をもち、その理想を実現するにはあまりにも非力な現実の自我(自己…

仏教と倫理に関するジレンマと宮沢賢治さん(2)

末木文美士さんによれば、人と人との関係を、「善悪の判断」を基礎に律する道徳的「法」としての倫理には、自他関係における矛盾・葛藤・対立・闘争を避けることができないのです。末木さんは、そうした視点でさらに、宗教と倫理、具体的には仏教と倫理との…

仏教と倫理に関するジレンマと宮沢賢治さん(1)

ここまで主として1927年に宮沢さんが直面した試練に関する同年8月20日付の作品を参照してきました。ではその作業から宮沢さんに関する何を見出すことができるのでしょうか。この問いに対しては、以下の3点をあげることができるのではないかと思います。第一…

「藤根禁酒会へ贈る」

1927年8月20日の試練を経て、宮沢さんは、自然との闘いに関してはもはや自分の出る幕ではないと悟ったのではないでしょうか。1930年4月4日付の高橋武治さん宛の手紙の中で、宮沢さん自身、当時自分が傲慢であったことを告白しています。それは、次の手紙の文…