シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

社会的企業のある地域コミュニティ――ケアンドゥ(2)

 ケアンドゥの地域づくりを担っているもうひとつの中核的組織はコミュニティ・センターです。その名前は、Here We Areといいます。文字通り私たちはここに存在しているということを宣言しているのです。どんな小さなコミュニティであってもそこには人が住み、生活し、世界に誇れる人間としての生活をしていることを知ってほしい、というのがHWAという名前の意味だそうです。

 HWAはひとつの側面では日本でいう地域自治会の顔をもっています。建物を入ると最初に地域行事やケアンドゥの地理的位置図および人口などの現勢を示すグラフなどの掲示板があります。その中で地理的位置図がケアンドゥを中心にした世界地図となっていることに興味をもちました。

 自分たちが住んでいる地域が地球の中心であるとする意識が表明されているのではないかと感じました。これと精神性が同じ地図を沖縄の今帰仁村でも見たことがあることを思わず思い出しました。どんな小さなコミュニティであっても、住んでいる人たちにとっては、そこが地球の中心なのです。

 HWAはまた持続可能な地域づくり組織としての顔ももっています。ケアンドゥのコミュニティ・センターはそのために造られたといってもよいと思います。センターの設立準備は1998年に始まり、2001年に開設されています。ロッホ・ファイン・オイスターの創業者のひとりであったジョニー・ノーブルさんの妹のクリスティーナ・ノーブルさんがこの設立の提唱者です。

 HWAの建設費用は約19万ポンドということでした。地域の人たちの募金活動によって集められたお金と、スコットランド政府の農村チャレンジ基金から補助を受けることで賄われました。また、その建設作業に地域の方々が参加しています。コミュニティ・センターは文字通り地域の方々自身のセンターなのだということを実感することができます。

 HWAの最大の特徴は、日本の町内会や自治会などと全く異なるところなのですが、それ自身が社会的企業として経済活動を行っていることです。そのため、非常勤の人を含め、8名のスタッフを雇用して1年を通して運営しているのです。HWAの建物に隣接して、植物の苗などを売るお店もあります。そのお店には、また日用品を扱っている売り場やお茶や軽食を提供するフードサービスのエリアも併設されています。HWAは日本の道の駅のような施設を経営しているのです。

 さらにHWAは発電事業も手掛けています。HWAは温室効果ガスの削減を目標に掲げています。2006年から、再生可能エネルギーを生産し、電力の自給の活動を展開しているのです。自分たちの発電事業を実現するための基金の積み立てを実施するとともに、ケアンドゥ地域の発電事業の歴史を調査する活動を行ってきました。そして、2007年、ケアンドゥ所有の電力会社・Our Powerを設立し、バイオマス燃料の生産とバイオマス燃料による発電事業の営業を開始したのです。さらにその後、風力発電事業も開始され、私たちの訪問時には水力発電事業も計画されていました。またHWAはHIEに「コミュニティのエネルギー会社」支援の補助金に申請しているとのことでした。

 HWAを訪問して感じたことのひとつにハイランドの地域づくりにおいては女性が活躍しているのではないかということがあります。それはアラプールを訪れたときも同じでした。ケアンドゥのHWAの場合も、専門職のスタッフは二人いたのですが、いずれも若い女性でした。受付のところには年配の男性がおり、はじめその方がコミュニティ・センターの代表の方ではないかと思ったのですが、その方は受付のボランティアのスタッフであるということだったのです。元々は公務員でしたが退職後ボランティアとして働いているとのことでした。

 そこで案内されたのが二人の専門職スタッフの方々のところだったのです。ニュースレターや各種の出版、ケアンドゥコミュニティに関するさまざまな調査研究とそれらの成果の展示を担当しているのがジャッキー・マクファーソンさんです。彼女は、またアーガイルカレッジのチューターでもあるとのことでした。ケアンドゥの再生可能エネルギーの生産事業を技術者として担当していたのが、ローナ・ウォッタさんです。彼女たちは、さらにケアンドにおける地域づくりの経験を世界的に発信するとともに、地域づくりのコンサルタントや地域づくりの担い手育成のための教室なども開催しているとのことでした。

 繰り返しになりますが、ケアンドゥを訪問して一番印象に残っているのは、ケアンドゥの地域づくりも女性たちが活躍しているなと感じたことでした。

 

          竹富島・白くまシーサー・ジャンのいちファン