シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

人生の旅人たちの出会いと交流の地(1)

 1年の中で2~3月というごく限られた期間ではあるのですが、毎年竹富島を訪れ、フィールドワークを続けていくことで、私がそれまで経験してきた観光とは違った旅人たちに出会うことができたのです。その方々は「人生の旅人」だという思いが、私の頭の中に自然に浮かびました。それ以来、自分のフィールドワークの目的とは別に、毎年そうした方々に出会い、彼ら、彼女らの話に耳を傾けること自身が竹富島を訪れる楽しみになっていったのです。そして、そうした方々に出会ったことで、なるほどそうした人生もありかなと、魅了されていきました。同時に、人にはその人なりの人生というものがあるのだなと、本当に実感していくようになりました。また、そのことで、すべての人の人生に幸あれと思えるようにもなっていったのです。

 最初に出会った方は、北海道から毎年北海道が雪に閉ざされる時期に訪れ、竹富島の私が定宿にしている民宿に宿泊している男性の方でした。はじめて竹富島を訪れたときは、宿泊する宿を決めていませんでした。竹富島に行ってから旅館や民宿に飛び込み、宿泊をお願いしたのです。何軒か断られ、偶然飛び込んだのがその民宿でした。そのときは、その方が民宿の方だと思い、空いている部屋がないか尋ねたのです。空いていると思うが、民宿の者ではないので、宿泊してよいと自分は言えない。しばらくすると民宿の者が帰ってくるのでそれまで待ってほしいという返事でした。それで、その方はその民宿のお客さんなのだと気づいたのです。あまりにも民宿の前の椅子でゆっくりされていたのでてっきり民宿の方だと思ってしまったのです。

 この方は高橋さんといいます。高校の教員をしていましたが、50歳代で早期退職し、その後年金暮らしをしていると言っておられました。毎年、北海道で雪の便りが聞かれる時期になると南に向かう旅にでるのだそうです。1~2か月かけて、北海道から本州、四国と九州を経て沖縄に向かうのです。そして沖縄では、宮古島を経て最終的に竹富島に到着し、いつもの民宿に宿をとり、そこで3月の末くらいまですごしていたのです。私が出会ったときには、高橋さんはそうした旅を、すでに6年にわたってつづけていました。長年のそうした旅の中で出会い、知り合いになった方も沢山おり、その方々のところに投宿して竹富島までの旅をつづけているということでした。

 高橋さんは、竹富島では、民宿に滞在し、島民の方々や民宿の宿泊者の方々との会話をすることで日々の生活を楽しんでいるように思えました。また心ゆくまでの読書も竹富島での生活ならではのものとなっていたようでした。島で開催される行事にもできるだけ参加していたようです。そして、そうした島での生活の中で感じたことや気づいたことを文章につづり、ときにはそれを地元紙に投稿するなどしていたのです。同じ北海道からの旅人同士ということもあって、毎年高橋さんに会うことができることが本当に楽しみでした。

 しかし、私が竹富島に通い始めて4年目ころだったと思うのですが、その年は高橋さんがまだ来られていないことを知りました。民宿の方によれば、その年、高橋さんは竹富島までの旅の途中、宮古島に滞在しているときに体調を崩し、竹富島には来られないことになったことを告げられました。それ以来、竹富島で高橋さんに会うことができないできました。高橋さん、お元気でおすごしでしょうか。またぜひお会いできることを願っております。竹富島には高橋さんのように定期的に通っておられる方が本当に沢山いるのです。そしてその方々の竹富島への旅の形は、その人たちの人生の旅の形に重なっているのではないでしょうか。

 

     竹富島・白くまシーサー・ジャンのいちファン

 <追記>

 高橋さんは、「竹富島 慕情」という歌詞を創っています。竹富島での出会いと交流を懐かしんで、その歌詞をここに掲載しておきたいと思います。

 

   竹富島 慕情

              高橋 啓治

一.灰色斑(まだら)の石垣に 色とりどりの花ゆれて

掃き目まぶしい サンゴ道

あなたと二人 肩くみ ゆけば

美(ち)らの街並み 琉球

屋根のシーサー 手を招く

 ここは竹富((タキードン)) 南の島は楽園気分

 あなたとわたしに思い出くれた 恋の島

 

二.ロマンを秘める星砂は 海で生まれた

  カイジの浜の 想い出は

 あなたと交わした 愛の口づけ

  安里屋ユンタの クマヤの墓は

   ひとりぼっちで 何想う

 ここは竹富 南の島の愛(ラブ)物語

  あなたとわたしに希望をくれた 愛の島

 

三.のんびり歩む水牛車 島の道すじ地図にして

  心に残る       巡り道

 あなたの写真を   ふ函に入れて

 ミンサー帯を    ゆるりと結ぶ

   いついつまでも幸せに

  ここは竹富 南の島は和(なごみ)に満ちる

  あなたとわたしに いやしをくれた 和(なごみ)み((ママ))島

 

四.島人(しまんちゅう)のこころは いつも温もり溢れ

  行事を運ぶ    風の道

 あなたの腕に 抱かれてゆけば

 種取(タナドウ)まつりは   最高調

  演目重ね    こころは踊る

 ここは竹富 南の島はうつぐみ心

 あなたとわたしによろこびくれた 祭り島

 

五.くれなずむ西桟橋は 沈みゆく陽(ひ)の物語

  みんなが集う    仲間道

 あなたの影が     ゆらめく先きは

  真赤に染めつ   エメラルドの海

  オリオン星座も  微笑(ほほえ)んで

 ここは竹富 南の島は 七色変化

 あなたとわたしに 未来をくれた 愛の島