シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

学生たちの学びの場を求めて

 卒業生のサラリーマン生活をとりまく環境の悪化と理不尽さの増大という状況を受けて、在学時代に学生たちに何を学んでもらったらよいだろうかについて考えるようになっていきました。時代的風潮としてはより一層「いい大学を出ていい会社に入る」という考えが強まっていたと思います。そのため大学では、厳しくなってきていた就職戦線の競争でいかに勝ち組となるか、そのノウハウを授けることが強調されるようになってきていたのです。

 私はと言えば、そうした時代風潮に対し、会社に勤めるだけが唯一の人生ではないということを体験することが大事なのではないかと思うようになっていきました。会社に勤めるという生き方でなくても、やりがいと生きがいをもって生き生きと生きていくことができる道のあることを、学生時代に経験し、学んでほしいと願ったのです。

 学生たちはと言えば、大学卒業後は就職活動をし、サラリーマンになっていくのが当然と思って育ってきているようでした。それ以外の選択肢を考えられないようになっていたのではないかと思います。そのため、就職活動に失敗したり、勤めていた会社を、さまざまな理由でやめることになると、そこで自分の人生が終わってしまうかのような気持ちになっていたように見えていました。

 確かに会社勤めの人生がすべて悪いものではなく、多くは自分の成長につながり、社会的に活躍できる場に立つことができるようになっているのだと思います。しかし、運悪くそうした会社との出会いができなかったときに、それで自分の人生も終わりになってしまうというようにだけは、学生たちになってほしくないと考えたのです。そうしたとき、やりがいと生きがいをもって生き生きと生きることのできる別の道の選択肢が発見できるような可能性を大学生の時代に広げておいてあげたいと願ったのです。

 幸いなことに、私の場合は、地域社会のフィールドワークという研究方法で現代社会研究を行っていました。そしてそのフィールドワークの中で、それぞれの地域社会づくりに関わっている多くの方々に出会うことができたのです。その方々には会社勤めをしている方々もいましたが、会社勤めをしていない方々も多くいました。それらの方々は、会社勤めをしていようがいまいが、皆さん、それぞれ、生きがいややりがいをもち、生き生きと生活し、活躍されていました。そうした方々に出会うと、とっても魅力ある生き方をされているなと感じたものです。

 それでできれば学生たちにもまずそうした方々に出会って交流する経験をしてほしいと考えるようになりました。それが彼ら、彼女らにとって、将来の自分の人生を考える上で、貴重な体験になるのではないかと思えたからです。そこで、ゼミやフィールドワークの授業を念頭に、そうした学生の学びを受け入れ、学生たちと関わってもらうことができる地域を探すことにしたのです。

 そうして出会った地域社会が、福島県の昭和村、北海道羽幌町の天売島、そして北海道江別市大麻座商店街でした。それらの地域社会に共通する特徴は、いずれも地域社会で活躍している学生と年代の近い多くの若者たちが活躍していることでした。またそれらの若者たちとの交流を核とした学びを実施したいという私たちの願いを快く受け入れてくださった地域でもあったのです。短い期間ではありましたが、それらの地域で私と学生たちは貴重な学びの体験をさせていただいたのです。

 

     竹富島・白くまシーサー・ジャンのいちファン