シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

スコットランドの精神風土象徴の地を訪ねて―アイオナ島(1)

 アイオナ島は、スコットランドインナー・ヘブリディーズ諸島に属する、幅1.6㎞、長さ5.6㎞、人口175人[ウィキペディア(2014)]の小さな島です。アイオナ島へは、スコッチウイスキーで有名なオーバンという港町から、まずマル島にわたり、さらにフェリーで行かなければなりません。経済的には観光業で生計をたてています。アイオナ島は聖地巡礼で有名な島なのです。

 キリスト教の聖地と言えば私たちはエルサレムを思い浮かべますが、スコットランドの人たちにとってはアイオナ島が聖地なのではないでしょうか。ウィキペディア(2014)によれば、西暦「563年、郷里のアイルランドを追われた聖コルンバは、12人の同士とともに修道院を創設した。彼らはここを拠点に、スコットランドイングランド北部の異教徒をキリスト教に改宗していった。学びの場として、あるいはキリスト教布教の拠点としてアイオナの名声はヨーロッパ中に広がってゆき、主要な巡礼地となっていった。アイオナ島は、スコットランドアイルランドあるいはノルウェーの王が埋葬される聖なる島となった」という歴史をもっています。

 ではキリスト教スコットランドの精神風土とどのような関係があるのでしょうか。社会学の中ではある社会の型とそうした型を生み出す宗教的精神風土との関係を探究することをひとつの課題としてきた歴史があります。代表的なものとして、マックス・ウェーバーさんの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』をあげることができるでしょう。ウェーバーさんは、その著書の中でプロテスタンティズムの倫理がいかにして近代資本主義を生み出していったのかを論じています。

 女性が活躍するような地域づくりが生まれてきている背景として、スコットランドの精神風土の基盤となっているキリスト教がひとつの大きな要素なのではないかということが今回のテーマとなります。宗教に関しては門外漢でキリスト教についてもよく知りません。キリスト教と言って思い浮かべることといえば、キリスト教においては、信者は個人個人が神との契約によって自己の内心と行動を律していくが、信者同士の横の関係性にあまり重きをおかず、また神による選民思想があり信者同士自分が神から選ばれようとしてお互いに競い合う関係性があるということぐらいです。そのためキリスト教は、西洋個人主義市場経済社会における人間観に親和性をもっているのであると教えられてきました。

 一方でスコットランドの精神風土はそうした西洋個人主義を乗り超えようとしているように感じるのです。例えばHIEの社会づくりの理念は、平等、連帯・団結、協力・協働、すべての人の包摂、そして持続可能性などです。それらは人々の横の関係性を大切にし、しかも選民思想的なところがありません。一見するとそうしたスコットランドの精神風土はキリスト教と無関係のように思えるのです。関係があるとするならばスコットランドにおけるキリスト教にはやはり独自性があることになります。そして事実、スコットランドにおけるキリスト教は長老派と呼ばれるもので、カソリックプロテスタントキリスト教とは異なっていたのです。その独自性が地域社会づくりに象徴的に現れているのがアイオナ島なのです。

 アイオナ島は宗教コミュニティが地域コミュニティにもなっているという特徴をもつ地域社会です。そのコミュニティはアイオナ・コミュニティと呼ばれています。アイオナ・コミュニティは、1938年、長老派の教えを基礎にした宗教家たちによって、スコットランドグラスゴーで設立されました。リーダーは、大都市の貧困問題に尽力していた司祭のジョージ・マクラウドさんです。マクラウドさん自身は超宗派のキリスト教をめざしていました。そのためアイオナ・コミュニティは長老派の人たちを中核としていますがその他マクラウドさんの活動に共感した多くのキリスト教の宗派の人たちが参加しています。

 彼ら、彼女たちは、アイオナ島で、当時廃墟となっていたアイオナ修道院の修復活動にたずさわります。また貧困に陥っている都市居住の若者たちに工芸的技術を修得させる支援活動を行おうとしたのです。さらに、彼ら、彼女らが考えるキリスト教の教えに従った生活を実践するコミュニティを築こうとしています。そしてその実践を世界中に発信し、自分たちの教えと宗教コミュニティを世界中に広めようとしているのです。

 

          竹富島・白くまシーサー・ジャンのいちファン