シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

2023-01-01から1年間の記事一覧

内ヶ崎作三郎さんの『人生学』(1)

内ヶ崎さんの『人生学』は、宮沢さんの地域づくりの思想とはどのようなものであったかを理解するための助けとなる方ではないかと考えます。さらに言えば彼が著した『人生学』は、宮沢さんの思想を理解するための参考書としても重要な著作ではないかと思いま…

地域づくりを支える思想

これも私事になりますが、自分が学生時代であったときには、社会づくりの思想と言えば、体制選択的、政治的なものであったと思います。それは、資本主義か社会主義か、保守か革新かという選択をめぐる思想ではなかったかと思います。当時は、いわゆる世界的…

表裏一体の関係としてある極楽浄土と地獄

平泉を訪れ、藤原一族の人たちが、それほどまでにこの世に極楽浄土世界を築こうとしたのかについて考えをめぐらすなかで思い至ったのが、藤原一族の人たちにとって現実世界があまりにも地獄であったからではないかということでした。このことは、後の時代の…

極楽浄土という心象風景

宮沢さんに関心をもつようになって、極楽浄土の存在とはなにかということも考えるようになってきました。現在のところ、仮説にすぎませんが、極楽浄土とは、宮沢さんが感じていたように死後の世界にあるのではなく、祈りと自然の美しさの中に霊意や神意を感…

自然とともに生きる

岡本さんは、東北人の不屈の精神を育んできたもののひとつが、「東北の自然の美しさ」であると指摘しました。そして、次のような文章をつづけます。 東北の自然の美しさに「魅了されたのは東北人だけでない。辺境でありながら、都人は東北の地にあこがれを抱…

われらみな「東北人」

宮沢賢治さんに関心をもつようになったことで、これまでであれば出会うことがなかったかもしれない本との出会いが増えてきました。その一つが、ここで紹介する読売新聞記者の岡本公樹さんの著した『東北不屈の歴史をひもとく』です。 この本は、2011年3月11…

人のために生きる

宮沢さんを修羅としての存在から不軽菩薩のような存在になることを願うような自己へとの自己形成の歩みを導いていった宮沢さんに内在していた力とはどのようなものだったのでしょうか。宮沢さんという人を知るために欠かせない問いです。 一つの仮説ですが、…

宮沢賢治さんの仏国土建設の道

宮沢さんは、新文明建設者としてふさわしい自分になるための自己研鑽に励むとともに、実際にこの娑婆世界に極楽浄土の仏国土を建設するための活動にも踏み出します。その第一歩が、国柱会へ入会し、その一員として仏国土建設に邁進することでした。しかし、…

宮沢賢治さんの自己研鑽(修行)の道

宮沢さんの人生は、阿弥陀仏さんにも匹敵するような偉大な人物にたるために、それからはほど遠い存在でしかない現実の自分自身と闘いつづけなければならなかった人生だったように思えます。それは、「無主義な無秩序な世界」に替えて「新文明を建設」するた…

宮沢賢治さんが向き合わなければならなかった修羅とは

宮沢さんの人生の軌跡をたどり、その中で宮沢さんの人間性のすばらしさを知れば知るほど、なぜ宮沢さんが自分を「修羅」との自己認識をしなければならなかったのかという疑問があらためて募ってくるのでした。そこで、ここでは、これまでの考察を踏まえて、…

「産業組合青年会」考(2)

これまでずっと、宮沢さんの詩の作品であると言われてきた「産業組合青年会」という作品をどう理解したらよいのか疑問に思ってきました。それは、この作品には、私自身にとっては全く無関係に思えた二つの内容が存在しているからです。その二つの内容とは、…

「産業組合青年会」考(1)

多くの人に慕われ愛されていると言っても、空海(弘法大師)さんと宮沢さんには大きな違いが存在しています。空海(弘法大師)さんの場合、生前からときの権力者の人たちにも慕われ、何かと頼りにされていたようです。それに対して、宮沢さんの場合は、生き…

人に寄り添い、見守ることで支えるという生き方(2)

空海(弘法大師)さんと宮沢さんのすごさを、両者が自分の死んだあとでも、すべての人を痛みや苦しみから救ってあげたいと願い、そのための具体的な行動をとっていたということに感じます。 それは、空海(弘法大師)さんであれば、京都の東寺の五重塔の建立…

人に寄り添い、見守ることで支えるという生き方(1)

前回、空海(弘法大師)さんと宮沢さんの生き様に共通するもの、それは、人の痛みや苦しみに、「寄り添い、見守る」ことで支え、心からそれらの痛みや苦しみから救ってあげたいという思いがあり、そのための行動をとるという生涯をおくったということではな…

空海(弘法大師)さんという存在

これも私事になるのですが、宮沢さんへの関心は、自分の終活と関連したものです。年齢の違いを問わず、これだけ日本の多くの人たちから関心をもたれ、愛されている存在でありつづけているのは何かということに惹かれたのもしれません。 宮沢さんがこれだけ有…

地域づくりが生みだす生活世界

前回宮沢さんの自身の生涯を通しての仏国土建設に関する主張とそのための自身の活動の試みを、芸術論的人生論および「自分たちの手で創る」共に生きる生活世界論と特徴づけました。では現代社会における社会づくりの動きの中で見ると、そうした宮沢さんの仏…

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を変える(4)

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を動かし、変えていく原動力となるのではないかという視点で見ると、これまで取り上げてきたエンゲルスさん、ロバート・オウェンさん、そして宮沢さんの主張や試みはどのように位置づけることができるでしょ…

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を変える(3)

ここまでよりよく生きたいという社会思潮が大きく社会を動かし、変えてきた歴史的出来事に関して、経済的利益を追求する自由と「命あっての物種」という何としても生きつづけることへの社会的意欲の高まりという二つの例を参照してきました。 では、現代社会…

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を変える(2)

よりよく生きようとする人々の思いや意欲の高まりが社会を動かし、変えていくのではないか、そしてロバート・オウェンさんや宮沢さんたちの仕事は、そうした思いや意欲を具体的な社会づくりの思想にまで結晶化させようとした貴重な仕事だったのではないかと…

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を変える(1)

ここまでエンゲルスさんの『イギリスの労働者階級の状態』を読みながら、思いつくまま、アトランダムに、宮沢さんの「ポラーノ広場」という作品を社会づくりとの関りでどのように位置づけたらよいかに関する考察をおこなってきました。そして、前回、宮沢さ…

「オールスターキャスト」ということば

「オールスターキャスト」ということばは、私が宮城県図書館で出会った『宮澤賢治読者論』の著者西田良子さんが注目したことばです。西田さんによれば、このことばこそ宮沢さんの最後のメッセージであると言えるものなのです。西田さんは言います、 「賢治の…

灰色の労働とそれを燃やす芸術活動

ところで宮沢さんは働くということをどのように感じていたのでしょうか。推測では非常に否定的に捉えていたのではないかと考えます。しかも、資本主義社会という社会システムの下では、経営者として働いても、経営者の下で労働者として働いたとしてでもです…