シニアノマドのフィールドノート

生き生きと生きている人を訪ねる旅日記です

「産業組合青年会」考(2)

これまでずっと、宮沢さんの詩の作品であると言われてきた「産業組合青年会」という作品をどう理解したらよいのか疑問に思ってきました。それは、この作品には、私自身にとっては全く無関係に思えた二つの内容が存在しているからです。その二つの内容とは、…

「産業組合青年会」考(1)

多くの人に慕われ愛されていると言っても、空海(弘法大師)さんと宮沢さんには大きな違いが存在しています。空海(弘法大師)さんの場合、生前からときの権力者の人たちにも慕われ、何かと頼りにされていたようです。それに対して、宮沢さんの場合は、生き…

人に寄り添い、見守ることで支えるという生き方(2)

空海(弘法大師)さんと宮沢さんのすごさを、両者が自分の死んだあとでも、すべての人を痛みや苦しみから救ってあげたいと願い、そのための具体的な行動をとっていたということに感じます。 それは、空海(弘法大師)さんであれば、京都の東寺の五重塔の建立…

人に寄り添い、見守ることで支えるという生き方(1)

前回、空海(弘法大師)さんと宮沢さんの生き様に共通するもの、それは、人の痛みや苦しみに、「寄り添い、見守る」ことで支え、心からそれらの痛みや苦しみから救ってあげたいという思いがあり、そのための行動をとるという生涯をおくったということではな…

空海(弘法大師)さんという存在

これも私事になるのですが、宮沢さんへの関心は、自分の終活と関連したものです。年齢の違いを問わず、これだけ日本の多くの人たちから関心をもたれ、愛されている存在でありつづけているのは何かということに惹かれたのもしれません。 宮沢さんがこれだけ有…

地域づくりが生みだす生活世界

前回宮沢さんの自身の生涯を通しての仏国土建設に関する主張とそのための自身の活動の試みを、芸術論的人生論および「自分たちの手で創る」共に生きる生活世界論と特徴づけました。では現代社会における社会づくりの動きの中で見ると、そうした宮沢さんの仏…

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を変える(4)

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を動かし、変えていく原動力となるのではないかという視点で見ると、これまで取り上げてきたエンゲルスさん、ロバート・オウェンさん、そして宮沢さんの主張や試みはどのように位置づけることができるでしょ…

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を変える(3)

ここまでよりよく生きたいという社会思潮が大きく社会を動かし、変えてきた歴史的出来事に関して、経済的利益を追求する自由と「命あっての物種」という何としても生きつづけることへの社会的意欲の高まりという二つの例を参照してきました。 では、現代社会…

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を変える(2)

よりよく生きようとする人々の思いや意欲の高まりが社会を動かし、変えていくのではないか、そしてロバート・オウェンさんや宮沢さんたちの仕事は、そうした思いや意欲を具体的な社会づくりの思想にまで結晶化させようとした貴重な仕事だったのではないかと…

よりよく生きたいという思いや意欲の高まりが社会を変える(1)

ここまでエンゲルスさんの『イギリスの労働者階級の状態』を読みながら、思いつくまま、アトランダムに、宮沢さんの「ポラーノ広場」という作品を社会づくりとの関りでどのように位置づけたらよいかに関する考察をおこなってきました。そして、前回、宮沢さ…

「オールスターキャスト」ということば

「オールスターキャスト」ということばは、私が宮城県図書館で出会った『宮澤賢治読者論』の著者西田良子さんが注目したことばです。西田さんによれば、このことばこそ宮沢さんの最後のメッセージであると言えるものなのです。西田さんは言います、 「賢治の…

灰色の労働とそれを燃やす芸術活動

ところで宮沢さんは働くということをどのように感じていたのでしょうか。推測では非常に否定的に捉えていたのではないかと考えます。しかも、資本主義社会という社会システムの下では、経営者として働いても、経営者の下で労働者として働いたとしてでもです…

「人間性を働かせる場」を創造する試み

ここまでロバート・オウェンさんや宮沢さんの試みを「愛と博愛」に基礎をおいた労働者や百姓の人たちの人間らしい生活空間を創り出す試みとして同じ性格を有しているものとして議論してきました。 しかし、宮沢さんの作品である「ポラーノの広場」に限って言…

人間感情の成熟と歴史進歩

ロバート・オウェンさんや宮沢さんのような「愛や博愛」に基礎をおいた労働者や百姓の人たちへの働きかけの試みを「歴史進歩」との関りでどのように位置づけることができるのでしょうか。くりかえしになりますが、エンゲルスさんのそうした試みに対する批判…

人間的感情と歴史進歩

これまでエンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を少し回数を重ねて読んできました。その際の思いは、エンゲルスさんはなぜ、ロバート・オウェンさんの試みを、そしてそれは宮沢さんの生涯をかけた試みに通じるものなのですが、受け入れるこ…

怒りと憎しみの感情か、愛と博愛の感情か

これまでエンゲルスさんと宮沢さんを対比的に両者の言動を参照してきました。思いは共通するところがあるのに、その思いを実現するために歩もうとしていた道は真逆のものでした。どちらが正しく、どちらが間違っているのでしょうか。 社会学的に言うと、どち…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(9)

宮沢さんとエンゲルスさんとでは、それぞれが生きていた時代と社会にどのように向き合う生き方をしていたかに関してはまさしく真逆の姿勢でした。しかし、同時になぜそのような姿勢の生き方になったのかに関しては共通する面もあったと思います。 宮沢さんは…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(8)

ここでは、宮沢さんの「ポラーノの広場」におけるファゼーロさんたちの「産業組合」の試みを、エンゲルスさんはどのように論じただろうかという問いをたて、その問いに関して考察できればと思います。 またその考察は、宮沢さんの「ポラーノの広場」という作…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(7)

だれが、どのようにして資本主義社会の形成原理である「自由競争」を廃絶していくことができるのか、そしてその過程はどのような道筋をたどることになるのか、ということに関してエンゲルスさんは何も示してくれていません。 それは、労働者階級の人たちがや…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(6)

ではエンゲルスさんは、ブルジョアジー階級に対する労働者階級の「全面的な社会戦争」の勝利への道筋をどのように考えていたのでしょうか。それは、以下の道筋でした。 第一の段階は、労働者たち自身の「社会戦争」を戦い抜くための組織化です。第二の段階は…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(5)

エンゲルスさんが労働者階級の人たちが資本主義社会の政治的変革主体となり得る資質として重視しているのは、既成の社会秩序やその秩序から生じてくる思考法に憎しみと怒りをもっていること、それゆえ、それらから自由な存在となっているという要素です。 エ…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(4)

すでに確認してきたことですが、プロレタリア化する労働者階級の、社会づくりという視点から見たときの状態とは、エンゲルスさんによれば、社会秩序形成能力が欠如してしいるというものでした。 しかし、他方では、エンゲルスさんは、資本主義社会の社会秩序…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(3)

永遠につづくであろう動揺と変動という社会秩序による生活の不確実性と不安定化の深化から自然必然的に生じる犯罪の増加は、社会にどのような帰結をもたらすのでしょうか。エンゲルスさんによれば、社会の解体化と万人の万人に対する社会戦争の全面的な勃発…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(2)

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」という著作をどのような問題意識で読んだらよいのでしょうか。社会学の視点から言えば、第一に、「労働者階級の状態」の科学的研究の成果と「資本主義社会の変革主体形成」という社会づくり的課題の間…

エンゲルスさんの「イギリスにおける労働者階級の状態」を読む(1)

宮沢さんは、「ポラーノの広場」という作品において、自分自身の仏国土建設という夢をファゼーロさんたちの産業組合づくりに託すことができたのでしょうか。その問いに答えていくことは、宮沢さんがどのような根拠をもってファゼーロさんたちこそ仏国土建設…

羅須地人協会活動の挫折と「ポラーノの広場」(3)

「ポラーノの広場」という作品を社会学の目を通して見たときに興味を惹かれることがまだあります。それは、宮沢さんにとっては、仏国土建設はめざすべき夢でしたが、ファゼーロさんたちは自分たちの幸せ生活の風景を探し求めていたら、結果として宮沢さんが…

羅須地人協会活動の挫折と「ポラーノの広場」(2)

ファゼーロさんたちの新しい「ポラーノの広場」づくりとはどのようなものだったのでしょうか。その物語は、レオーノキューストさんが、「九月一日」の夕方、それまで行方不明となっていたファゼーロさんと再会するところから始まります。 行方不明になってい…

羅須地人協会活動の挫折と「ポラーノの広場」(1)

中野さんによれば、宮沢さんの「ポラーノの広場」という作品は、彼の羅須地人協会活動の挫折感の影響が色濃く表れており、彼の夢の敗北の文学であるということでした。しかし、本当にそのような理解だけでいいのでしょうか。そのことを考えてみたいと思いま…

宮沢賢治さんの人生から学ぶ

ここまで宮沢さんの歩んできた人生とその中で生み出した作品を、社会学の目を通して観察してきました。その過程で、とくに宮沢さんの生きる姿勢に関して、社会学者としてではなく現代社会を生きる一個人として印象深く学んだことがあります。 それはどんな状…

科学と宗教と直観と

現在私たちが生きている社会の中で生起している数々の出来事において、社会学的に見て関心を惹く出来事の一つは、ロシアによるウクライナ侵攻と、そこで繰り広げられているとても人間の心をもったものとは思えない蛮行の嵐が吹き荒れている姿なのではないで…